
社会全体でデジタル化の取り組みが進む中では、多くの技術が大きな役割を果たしています。中でも注目を集めているのが人工知能、つまりAI分野です。人工知能は人間の思考回路を模したソフトウェアであり、革新的なサービスが次々に開発されています。そんなAIについて「自分で作ってみたい」と考えたことのある人も少なくないでしょう。
本稿ではAIの個人開発の可能性について詳しく見ていきます。
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目次
人工知能の開発は誰でもできる?
結論から言えば、個人が人工知能を作成することは不可能ではありません。しかし1からすべて自分でシステムを組み上げるという方法は、膨大な時間と労力を要するため現実的ではないでしょう。
そのため、個人で人工知能を作る場合はフレームワーク・API・ライブラリなどを有効活用するのがおすすめです。フレームワークとは開発に必要となる機能を集めた枠組みであり、各プログラミング言語に対応したものが存在します。フレームワークは開発における作業効率化に効果的なため、個人での人工知能開発にも有用なツールです。
APIは「Application Programming Interface」を略したもので、アプリケーションに実装されている機能の一部を別のアプリケーションで利用できるようにするシステムです。すべてのアプリでAPIが実装されている訳ではありませんが、開発したい人工知能に実装予定の機能でAPIが利用できれば開発工数の削減に繋がります。
ライブラリには汎用的に使用できるソースコードが保存されており、1からコードを入力する手間が省けたり効率的なコード記述で動作が軽くなったりする点がメリットです。
上記のようなツールを有効活用すれば、個人でも自力で人工知能を開発することができます。しかし最低限プログラミングに関する知識とスキルは押さえておく必要はあるので注意しましょう。
一般的に人工知能の開発にはPythonやJavaScriptといったプログラミング言語、データベース言語であるSQLなどが用いられます。それぞれ人工知能開発以外の分野でも利用されている言語なので、学習しておいて損はありません。
上記の言語について詳しく知りたい場合は以下の記事がおすすめです。
人工知能を作るためのステップ
人工知能を効率的に作るためには、まず制作プロセスの全体像と順番を把握しておくことが大切です。以下のステップを参考にしながら、人工知能の自作を目指してみてください。
人工知能を作る目的を決める
人工知能は様々なサービスに活用できる技術ですが、開発段階から目的や方向性を固めておくことが大切です。人工知能の精度を高めるためにはデータを学習する必要があり、読み込ませるべきデータの種類や内容は人工知能が果たす役割によって異なります。
「条件にマッチする情報を提案させたい」「画像や写真を自動で認証・分類させたい」など、「開発する人工知能で何をしたいか」を明確に定めておきましょう。ゴールが見えているとモチベーション維持にも効果的なので、自力開発をやり遂げるためにも大切なポイントです。
必要なデータを集める
人工知能の骨組みを組み上げても、そのままではシステムとして機能しません。ソフトウェアとして動くようになったばかりのAIは言わば赤ん坊のような状態であり、論理的に思考することも言葉を発することもできないのです。
この状態の人工知能を育てるためには、先に述べた通り目的に合ったデータを収集・用意しておく必要があります。不要なデータは人工知能の精度を下げてしまう原因になるので、必ず目的にマッチした内容であるか確認するようにしましょう。
また、学習させるデータは「判断基準や傾向が明確なもの」がベストです。曖昧なデータは人工知能の分析を妨げる可能性があります。データセットは無料で公開されているものを利用するのがおすすめですが、一度規約に目を通しておくと安心です。
機械学習モデルを作る
データが用意できたら人工知能の核とも言える機械学習モデルを作成しましょう。機械学習モデルは簡単に言うとプログラミング言語やアルゴリズム(課題解決のための計算方法・処理方法)を用いて、データから背景や傾向を読み取って回答を改善していくシステムです。
機械学習モデルにも様々な種類があり、それぞれで得意とする分野が異なります。始めのうちは複雑なコーディングを必要としない人工知能作成サービスを利用して、解説に沿ってモデルを作るのがおすすめです。
サービスとして公開する
作成した人工知能はサービスとして一般公開して、実用性や利便性に関する評価を集めましょう。Web上で公開する場合はHTMLやCSSといった言語を学習しておくと、スムーズにWebサイトを構築できます。
サービスが正常に稼動しているか否かはもちろん、サービスが利用された際のデータがしっかり蓄積されているかもチェックしてください。
反復利用による精度向上は、人工知能の大きな利点なのです。また、公開に先立ってはテスト用のデータで回答精度を確認しておくことも忘れないようにしましょう。テスト段階や運用後に問題点が発覚した場合は、ひとまず学習データを見直してみてください。
無料で人工知能が作れるサービス
初めて人工知能を作る場合は、挫折してモチベーションを失ってしまわないようにすることも大切です。比較的簡単に人工知能が作成できる無料サービスも多いので、まずは以下に紹介するサービスで人工知能作成の感覚を掴みましょう。
Watson
WatsonはIBM社が提供している人工知能APIサービスです。アプリケーションの構築・管理・実行が可能なIBM Cloudに登録することで利用できるようになり、制約付きのライトアカウントであれば無料となっています。
Watsonは「プロセスの効率化」や「高付加価値」に長けている点が特徴であり、世界的なシェアも高い信頼性のあるサービスです。プログラミング言語などある程度予備知識を備えているので、初めから本格的な人工知能を作ってみたいという人におすすめと言えるでしょう。
ChatGPT
2022年11月の一般公開以来高い汎用性で大きな注目を集めているChatGPTですが、実はプログラミングコードを生成させることができます。ChatGPTには有料版と無料版が用意されており、コード生成は無料版でも可能です。問いかければ開発環境や学習データに関する質問にも答えてくれます。
人工知能制作でつまずきやすい機械学習モデルの作成をサポートするツールとして優秀な存在と言えるでしょう。また、有料にはなりますがChatGPTを他のアプリケーションと連携させるAPIサービスも展開されています。
LINE
国内だけで8,600万人以上のユーザーを抱える大手SNSのLINEでは、用途や目的に合わせたチャットボットを作成できるサービスを展開しています。「LINE応答メッセージ(特定のキーワードに反応)」「AI応答メッセージ(内容をAIが判断)」「Messaging API」という3パターンの作成方法が用意されているのが特徴です。
前者2つはLINE公式で用意されたフレームワークに沿って設定とメッセージ入力を行うため、プログラミングスキルがなくても人工知能を作ることができます。Messaging APIは自分で作ったチャットボットをWebアプリとしてLINEと連携させるというもので、専門知識が必要です。
身に付いている知識やスキルと相談して作成方法を選べる点は大きなメリットと言えます。もちろん、個人用のアカウント開設自体は無料です。
人工知能を自作して将来性の高いスキルを磨こう
人工知能と聞くと小難しいイメージを持つ人も多いですが、日常生活の様々なシーンで実用化されている身近な技術になりつつあります。その開発についても年々ハードルが下がり、フレームワークやライブラリの活用によって個人で作成することも不可能ではなくなりました。サービスを自作することは、人工知能への理解を深めるのに有効な取り組みです。無料の作成サービスなどを活用して人工知能作成の経験を積んでみてください。